ごきげんよう

一年中ふとんが恋しい

mermaid fermata、いい曲だなぁというおはなし

 

みなさまごきげんよう、いかがお過ごしでしょうか?

ついに、2020年4月22日。Altessimoの新曲「mermaid fermata」が収録された、THE IDOLM@STER SideM 5th ANNIVERSARY DISC05 Altessimo & 彩 & High×Jokerが発売されました。

THE IDOLM@STER SideM 5th ANNIVERSARY DISC 05 Altessimo&彩&High×Joker

THE IDOLM@STER SideM 5th ANNIVERSARY DISC 05 Altessimo&彩&High×Joker

 

 
試聴を聞いた時からずっと「この時を……待ってた……!」という気持ちであふれていたのでめちゃめちゃ楽しみでした……発売おめでとう……!ほんとうにおめでとう……!
Singing Exploreresもめちゃめちゃいい曲だし感想もあるんですけど、どうしてもmermaid fermataのことを考えるといてもたってもいられなくて、この気持ちをどうにか残しておきたくて、また久々にぽちぽち文字を打っています。

 

↑試聴が出た時のツイート

これまでのAltessimoの曲はThe 1st Movement~未来のための二重奏~は彼らが踏み出した一歩目、「これから」を歌う歌、Never end「Opus」は彼らが過去と向き合って、それでも「音楽と生きる道を選んだ」決意の歌、Tone's Destinyは前二曲でアイドルとして踏み出すことになった彼らが、踏み出した先で何を見て聞いて感じたか、もっと先へ先へと歌っている歌だったかなと思います。(※個人の感想です)(これまでもここからも個人の感想です)
これらはすべて「彼らの物語を歌った」歌で、これが「Altessimoらしさ」でもあるのかもしれないとは思っていましたが、同時に「アイドルとしての物語をスタートさせた彼らが、アイドルとして世に放つ、『Altessimoのアイドルソング』が聞きたい」というぜいたくな願いを、ちょうどTone's Destinyが出てしばらくしたころから、モバゲー版ゲーム内のストーリーでどんどん成長していく彼らを見ながらずっと持ち続けてきました。
「歌を通して自己紹介をする」のも、「歌を通して自らの体験や気持ちを届ける」のも、彼らにとって一番ふさわしい形でしょうし、そこからスタートするのも納得です。でも、ゲームの中のお話でさらにもっと先へと進んでいく彼らを見て、過去にとらわれずに先を見据えて踏み出した彼らに、「アイドルソング」を歌ってほしかった。


そう思って待ち続けていたところで発売が決まったのが今回の新曲「mermaid fermata」でした。

(※本津鬼→ほんとうにの打ち間違いです)


この曲を聞いた時、夜の海だなあ、夜の海が見えるなあ、と思いました。

そして「そうか、これがAltessimoのアイドルソングなんだな」と噛みしめて、いつも想像を超えられてばかりだなぁ、と笑っていたような気がします。不気味なオタクだ…

というのも、「彼らのアイドルソングが聞きたい」とは言ってきたけれど、彼らがどんな「アイドルソング」を歌うのか、正直あまり想像がつかなかったのです。急にポップでアップテンポな曲を歌うのはちょっと突飛すぎる気もするし、EDMごりごり!みたいなのもちょっと違う気がする。ロックはそれはそれで聞きたいけど…とこのあたりで自分の中のアイドルソングの定義がゆるゆる、かつそもそもアイドルソングに無知だということに気づく。無知の知。二次元オタクしかしないでこれまでのオタク人生を歩んできてしまったので仕方がない…
そんな自分なので、「Altessimoのアイドルソング」を想像することはできなかったけど、いざ聞いてみたら「あっ!こういう路線か!」となんか合点がいった。試聴が出た当時みんなが言ってたけど、KinkiKidsさんあたりが歌っている曲にありそう感がすごくないですか!?音楽についてもアイドルソングについても造詣が深くないので、うまい言葉がわからないんですけど、なんかそういう雰囲気をまとっている。
なるほどな~!この路線な~!そうか~!!!と唸りながら試聴を聞いてました。

 

さて、ここからは歌の細かい内容についてに戻るのですが、これまでのアルテ曲では、聞き手に対して呼びかける歌詞であっても、それはあくまで「聞いている大衆」のような、ふわっとした二人称であったように感じます。特定個人の誰か・何かを「あなた」「君」と指す歌詞は、ユニットの片割れ(かメタ的に言うとプロデューサーも?)以外にはほとんどなく、彼らの歌う「物語」は彼ら自身の物語でした。

でもこの曲は、夜の海という情景の中で語られる、彼ら自身ではない誰かの、終わりがない(ように感じるほどの)苦しみや悲しみに対して歌いかけている「物語」です。彼ら自身の身の上を語ったわけではなく、物語の中の誰かに寄り添い、歌いかけている。まずこの変化がうれしくてうれしくて、そのどうしようもないくらい膨れ上がった「うれしい」と「好き」の気持ちを言葉にしきれないことがしんどいと感じるくらいにうれしくて、フルで聞けることがとても楽しみと同時におそろしくもありました。フルで聞いたら、どうなってしまうんだ…?試聴の時点でこんなにもはちきれそうになってるのに…

 

今回はAmazonの配送が遅れていたのでフラゲができず(でも発売日には届いた)(こんなご時世なのにほんとうにありがとうございます…サンキューお急ぎ便)、もがき苦しみながら火曜日一日を終えて日付が変わった瞬間iTunes Storeでぽちってフルを聞きました。

フルを聞いて、歌詞を読んでみて、悲しげな曲調だけれどとてもあたたかい曲だな…と感じました。そしてとても生命力にあふれている。
歌詞を見ていきます。

セカイよ、君との嵐聞いていて
どこへも行けない荒れ狂う mute

安らぎもどんな美しいシーンも
透明な身体を過ぎるだけ
僕らの中を巡るさえずりは lamentoso
…一人だったら

この曲を通して聞いてみた感じ、海の中にいる何かとして歌っている、というよりかは物語を包み込んでいる海そのものの視点…というか、物語を俯瞰している立場から歌っているように聞こえます。個人的にですけど。
「君」の中にある、声にならない(=mute、留めた声)けれど「慟哭」と表現されるほどの激情を、僕たちが代わりに天を揺らすほどの嵐にしてセカイに轟かせよう。
「声を失ってた(Never end「Opus」冒頭)」彼らが、こんな歌を歌う日が来るなんて……と震えてしまった。

 

フォロワーさんもおっしゃっていたのですが、他にもこれまでの彼らの苦しみを思い起こさせるようなフレーズ*は出てくるものの、この曲の中ではそれらはあくまで「そんな苦しみに寄り添いたい」という形で登場します。

*「胸を震わす孤独のtremolo 抱きしめて」→Echoes My Noteの「でも孤独な音色は冷たい 誰に寄り添えもしないから」
「満ち引きを打ち明けず/ただ波間を漂う心の近く」→Sanctuary Worldの「心動く揺れが 苦手になった そんな錯覚で/眠ってる海月のフリを していた/五線の海で 呼吸ピアニシモ」
「痛みに軋んでいる思い」→Never end「Opus」の「ヴィブラートが壊されそうな」
などなど(他にも重ねようと思えば歌詞に限らずたくさん)

 

彼らの過去の苦しみを知っている人であればあるほど、この曲での彼らが「こんな苦しいこともあるよね」と言ってくれること、彼らがついに「聞き手に寄り添う歌を歌っている」ことの重みがわかるし、うれしくてしんどいという……

麗さんの履歴書にある未来に向けた決意コメントでは、
「心が折れそうな時は誰にでもある。
 そんな時に寄り添えるような曲を奏でられるようになりたい。
 まだ未熟なわたしだが、これからも変わらずに見守っていてほしい。」
と言っていて、ついにそれが叶ったんだな……という意味でも、幸せだな…と噛みしめてしまいます。聞き手に寄り添う歌……ついに……出たんだな……

 

作詞の真崎エリカさんはこうおっしゃっていて、そうだよな、いろいろ乗り越えてきた描写がはっきりなされた(※モバ基準)今のAltessimoだからこその曲だよな…とゲンドウポーズしてしまった。そして「誰もが泡と消えない mermaid」ともあるしこれは現代版「人魚姫」なのかな…というか、人魚姫の物語を通じて、「苦しい」「悲しい」という気持ちを感じている聞き手の結末を、希望のあるものへ書き換える物語なのかな、と思いました。
聞き手が抱えているネガティブな感情を「そんなこともある、でも大丈夫」と寄り添えるようになったのは、彼らにとってそういった苦しみを過去のものとして受け止められるようになった今だからこその曲……めちゃくちゃめちゃくちゃ待った気がするけど、待っていてよかった……

 

ついまた話が逸れてしまったのですが、歌詞に戻します…
Cメロになると、一気に話が進展して、

強く…響く…テンポに…愛に…
同化して溶けて羽を付けて飛べ!

と、正直予想外の歌詞がやってきます。
最初本当にさっぱり予想外というか、学がなくてめちゃくちゃ混乱したのですが、この曲を聞いてから人魚姫を読んで解決しました。
(ちなみに青空文庫で人魚姫、読めます)
https://www.aozora.gr.jp/cards/000019/card58848.html
https://www.aozora.gr.jp/cards/000019/card42383.html

読んでみると、ああ、ここは最後の空気の娘たちのところへ行くところなんだな、とわかってなるほど、となったのですが、しかしまさか彼らが「飛べ!」なんて、彼ら自身ではない誰かに対して、「!」のついた命令形の歌詞を歌うなんて、とやっぱり少し驚いてしまい……これまで315プロで出会った二人が比翼になって羽ばたいていくぞと歌っているのを眺めていたのに、「飛べ!」と背中を押される側になる……うーん既視感!これかぁ!こういうことかぁレジェP!!!!!(ちょっと違うのでは…)

 

続く落ちサビの歌詞、本当に本当に好きですきで最高だな…って思うのですが、

悲しみ繰り返すならトゥコーダ
夜明けまで急ごう

読んだままでもうバッチリ伝わるであろう簡潔な歌詞でありながら、Altessimoらしい言葉で希望のある結末を示していて、思わず「うわぁ~!」って声が出てしまった。
悲しいメロディのリピートから、コーダに飛んでしまおう。夜はもう終わりだと。絶妙な言葉選びだな~!!!ってエモくてゴロゴロした。好きだ。落ちサビは音の雰囲気が嵐の波間ではなくて静かな海の中なのもすごい。

そのあとのラスサビは、これまでのこの曲の曲調から大きく変わることはないけれど、ざっとまた海面まで浮上して、嵐の海に戻る。歌詞は1サビと途中まで同じだけど、ずっと夜のまま、新しい一日がやってこないまま止まっていたところから、「今日」が開く。うっすらと朝の訪れがやってきているのが見えて、夜は過去のものになる。

一番最後の「幸せな」が都築さんパートなのがまた、個人的にとてもうれしくて苦しい。
これまで喪失を避けるために幸せさえも手放して平坦な日々を生きていた彼が、「幸せな今日を開くよ…――!」と誰かの幸せを願って背中を押している。こんなにうれしいことがあるだろうか(いやない)(反語)。アイドルとしての彼は、こんなにも、誰かに寄り添った歌を歌えるほどになったんだなぁ……と泣けてしまった。なんて幸せなんだろう…

 

最後に嵐の音のような残響のまさにフェルマータ(余韻を残してほどよく伸ばす)で終わる。
人によって感じ方や聞こえ方、見え方は違うだろうけど、Altessimoの曲は特に聞いていて物語が見える、ような気がする。これまでは彼ら自身の物語が歌われていたし、リアルライブでのパフォーマンスも相まって特によくその幻影が見えていたのだけど、この曲でも歌を聞いているのに情景が目に浮かぶような感覚がした。うまく言葉で言えないけど、この感覚がやっぱりすごく好きで、彼らはいろんな景色を見せてくれるな、Altessimoの音楽が見せてくれる世界が好きだな、と思います。本当にすばらしい新曲だった。ありがとう……ありがとう……だいすきだ……

 

また語彙が溶けて終わってしまったのだけど、本当に、うれしくてたまらないこの気持ちをどうにか残しておきたくて、だらだらと書き綴ってしまった……。
でもこれでやっと一区切りつきそうなので、次はSinging Explorersをちゃんと聞きこんでこようと思います。
本当にありがとうございました。新しいユニット新曲もたのしみです。
おやすみなさい。